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七夕の夜

短冊

たなばたのよる

京都の町外れに小さなお花屋さんがありました。
いつも優しいかおりがしています。


お店の中で女の子は花を見ているのが好きでした。
優しくてさわやかな気持ちになれるからです。


女の子の名前はまゆちゃん
お母さんのお手伝いを時々しています。


7月になったばかりのある朝
お店に男の子が入ってきました。
「あった、ぼくの欲しかったもの」
「白いばらをください。」


まゆちゃんはドキドキしました。
お花を売るのが初めてだったからです。
まゆちゃんがばらの花を1本渡すと男の子は
走って行ってしまいました。
ありがとうと言いたかったのに。。。


まゆちゃんは男の子が気になりました。
その次の日も、その次の日も
男の子は白いばらを1ぽん買いに来ました。


まゆちゃんは思い切って男の子に聞きました。
「だれなの」
男の子はきらきら光る瞳でまゆちゃんを見つめています。


この町で一番 優しい女の子から白い花を買いたかったんだよ。
七夕の日、踊りの可愛い女の人に白いばらを贈るんだ」
男の子は笑顔でそう言って走って行きました。


それから何日が過ぎた七夕の夜
夜空にはキラキラ光る天の川が流れていました。
「あの子だ」
花を買いに来た男の子が立派な男性になっていました。
「彦星だったんだ」


そして天の川の岸で踊っている織姫の姿がありました。
髪に3本の白いばらの花を挿しています。
「素敵」
まゆちゃんはうっとり見とれていました。


「綺麗な花を頂きましたよ」
夜空から優しい声が響いて来ました。
忘れないほど美しい様子で織姫は踊り続けます。


やがて織姫は躍るのを止めて
白いばらを夜空に投げると
天の川から3つの星のカケラが流れて行きました。


まゆちゃんはそっとお願いをつぶやきました。


優しい 女の人に なれますように

大人になったまゆちゃんは
「広島屋」「白いばら」
昭和の輝きを残したお店の優しいオーナーさんとなりました。